平屋の生活動線には上下の移動がありません。そのたった一点だけで、家事の負担は圧倒的に軽くなるのです。例えば2階建ての場合、家族全員分の濡れた洗濯物をベランダまで運ぶのは身体的にも大変で、精神的にもつい億劫になってしまいがちです。一方、平屋であればその負担が大きく軽減され、結果として家事に対するハードルもぐっと低くなります。

平屋では、家族間の距離を自由に調整することができます。2階建ての場合、LDKと各個室の距離はどうしても離れがちですが、平屋であれば、各個室をLDKの隣に配置することも、廊下や玄関ホールを挟んで少し距離を取ることも可能です。家族それぞれのライフスタイルに合わせて、心地よい距離感を実現できるのが平屋の魅力です。

平屋は2階建てよりも建物の重量が軽いため、地震や台風による横揺れを抑えることができます。一般的に、2階建ては平屋の約1.4倍、3階建ては約1.6倍揺れると言われています。そのため、平屋は耐震対策に多くの費用をかけなくても、安心して暮らし続けることができます。また、雨風による外壁の劣化も平屋の方が少なく、メンテナンスコストを抑えられるというメリットもあります。

2階建ての家には、階段・バルコニー・2階のトイレ・廊下など、平屋にはないスペースが必要になります。これらを合計すると、およそ5坪分の面積になります。この5坪を削るだけで、建築費用を大きく抑えることができるのです。さらに、外壁のメンテナンス費も平屋の方が有利です。高所作業が少ないため、足場代を節約できます。また、平屋と2階建てで軒の長さが同じ場合、平屋の方が外壁に雨風が当たる面積の割合が小さくなります。その結果、平屋は2階建てに比べて外壁の劣化がゆるやかになり、メンテナンスのサイクルを長くすることができます。

お家のサイズを考える際、つい直近の10年にフォーカスしてしまいがちですが、実際には50年以上住み続けることもあります。各個室が1階にあれば、お子様がいらっしゃる時には子ども部屋として、お子様が巣立たれた後はゲストルームや趣味部屋として活用できるため、2階建ての個室のように使われずに放置されることが少なくなります。

冬の寒い日にお家を温める方法は、暖房機器だけではありません。太陽の熱を効率的に居住スペースに届けることができれば、「0円」のエネルギーでお家を温めることが可能です。しかし、夏には光熱費がかさんでしまうというデメリットもあります。そのため、どちらがお得かは年間を通じて比較する必要がありますが、年間の光熱費は平屋の方が安くなります。

平屋は上階がないため、天井を高く設計することができます。勾配天井やロフトを取り入れることで、開放感のある伸びやかな空間を実現できます。勾配天井は、本来デッドスペースとなる屋根裏部分を有効活用できるデザインです。床面積を増やすことなく、建材も抑えながら個性的な空間をつくれる点が魅力です。また、高い位置に窓を設けられるため、周囲の建物の陰になりにくく、自然光を取り込みやすいというメリットもあります。さらに、天井の高さを変えることで部屋にメリハリが生まれ、開放感や落ち着きなど、空間の印象を自在に演出することができます。

2階建てでは、2階部分を支えるために柱や梁、耐力壁などの位置が構造上決まっており、窓の配置には制約が生じます。特に耐力壁の位置するところは建物の強度を保つために大きな役割をになっているので、自由に開口部を設けることが難しい場合があります。一方、平屋は一層構造で建物全体の荷重が分散しやすく、構造上の制約が少ないため、開口計画の自由度が高いのが特徴です。採光や通風、眺望、プライバシーなど、住まい方に合わせて柔軟に窓を配置できることが、平屋の大きな魅力の一つです。