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断熱・気密の違いで暮らしがどう変わる?

2025/09/22

富田友菜

注文住宅を検討しているとよく耳にする「断熱」と「気密」という言葉。どちらも住宅の性能を語る上で欠かせないキーワードですが、「似ているようで何が違うのか分かりにくい」と感じる方も多いでしょう。実は、この2つの性能は密接に関わり合いながら、日々の暮らしの快適さや光熱費、さらには健康にまで影響を及ぼします。

この記事では、断熱と気密の違いを整理し、それぞれの性能が高いと暮らしがどう変わるのかを解説していきます。

  1. 断熱とは?

断熱とは、外気温の影響を室内に伝わりにくくすることです。

壁・屋根・床・窓などに断熱材を入れることで、夏は外の熱気を室内に伝えにくくし、冬は室内の暖かさを外に逃がさないようにします。つまり「魔法瓶」のように家を包み込み、外気から室内を守る役割を担います。

断熱性能が高い家の特徴
• 夏:外気の暑さを遮断し、冷房が効きやすい
• 冬:暖房が長持ちし、寒さを感じにくい
• 一年を通して快適な室温を保ちやすい
• 光熱費を抑えられる

断熱材の性能は「熱伝導率」や「厚み」によって変わります。さらに窓の断熱性(ペアガラスや樹脂サッシなど)も重要なポイントです。

  1. 気密とは?

一方で気密とは、家の隙間をどれだけ少なくできるかを示すものです。

壁と窓の取り合い、床と壁の境目、コンセントまわりなど、家には目に見えない細かな隙間が存在します。これらの隙間から空気が出入りすると、せっかくの断熱性能も効果を発揮しにくくなります。

気密性能が高い家の特徴
• 隙間風が入らず、室温が安定しやすい
• 冷暖房の効きが良くなり、省エネにつながる
• 外のホコリや花粉、騒音を防ぎやすい
• 計画的な換気ができ、空気環境が整いやすい

気密性能は「C値(相当隙間面積)」という数値で表され、数値が小さいほど隙間が少なく高気密とされます。

  1. 断熱と気密の違いをシンプルにまとめると
    • 断熱:熱の出入りを防ぐバリア
    • 気密:空気の漏れを防ぐカバー

断熱だけが優れていても、隙間から空気が出入りすれば性能は十分に発揮されません。逆に気密だけが高くても、断熱材が不十分なら夏は暑く冬は寒い家になってしまいます。両方をバランス良く高めることで、快適で省エネな住まいが実現するのです。

  1. 断熱・気密が暮らしに与える影響

(1) 光熱費の違い

断熱・気密が高い家は冷暖房効率が良いため、エアコンの使用時間が少なくて済みます。例えば冬の朝、断熱性能が低い家では夜のうちに熱が逃げてしまい、朝起きると室温が5℃以下に下がることも珍しくありません。

一方、高断熱・高気密の家なら、室温が15℃前後に保たれ、少し暖房を入れるだけで快適に過ごせます。その結果、年間の光熱費に数万円単位の差が出ることもあります。

(2) 健康への影響

断熱・気密性能が低い家では、冬場に部屋ごとの温度差が大きくなり、ヒートショックのリスクが高まります。特に浴室や脱衣所は暖房が効きにくく、高齢者にとっては命に関わることもあります。

高断熱・高気密の家なら、家全体の温度差が小さく、ヒートショックのリスクが大幅に減少します。また、カビや結露も発生しにくいため、アレルギーや喘息の予防にもつながります。

(3) 快適性の違い

気密が低い家では、冬に「足元がスースーする」「窓際が寒い」と感じやすいものです。逆に夏は「冷房が効きにくい」「湿気がこもる」といった不快感が出ます。

断熱・気密を両立させると、家中がほぼ同じ温度に保たれるため、どの部屋にいても快適です。寝室や子ども部屋も安心して使えるでしょう。

(4) メンテナンス性

気密性能が高い家では、外からのホコリや花粉の侵入が少なく、掃除がラクになるというメリットもあります。さらに、計画的な換気システムが機能しやすく、家の寿命も延びやすいといわれています。

  1. 「断熱だけ」「気密だけ」の落とし穴

断熱と気密はワンセットで考える必要があります。

例えば、断熱材を厚くしても隙間だらけの家では、暖かい空気がすぐに逃げてしまいます。逆に気密性だけを高めると、湿気がこもりやすくなり、結露やカビの原因になることもあります。

つまり、「高断熱・高気密」の両立こそが理想的な家づくりの鍵なのです。

  1. 高断熱・高気密住宅にするためのポイント
  2. 窓の性能を重視する
    家の熱の出入りは窓からが一番多いため、ペアガラスやトリプルガラス、樹脂サッシを採用すると効果的です。
  3. 断熱材の施工精度
    どんな断熱材を使っても、隙間なく正しく施工されなければ性能を発揮できません。施工技術の高い住宅会社を選ぶことが大切です。
  4. 気密測定の実施
    実際にC値を測定し、数値で気密性能を確認できる会社を選ぶと安心です。
  5. 換気計画とのセット設計
    高気密住宅では換気システムが非常に重要です。計画的な換気で、新鮮な空気と快適な湿度を維持できます。

まとめ:断熱と気密は「快適・健康・省エネ」の土台

断熱と気密は、それぞれ別の性能ですが、住まいの快適さを支える両輪のような存在です。
• 断熱は「熱の出入りを防ぐ」
• 気密は「空気の漏れを防ぐ」

この2つがそろうことで、光熱費が下がり、健康リスクが減り、どの部屋でも快適に過ごせる住まいが実現します。

家は一度建てると簡単には性能を変えられません。だからこそ、家づくりの初期段階から「断熱と気密」を意識し、住宅会社にしっかり確認することが大切です。

断熱・気密性能にこだわった家は、長い目で見れば家族の暮らしを守る“最良の投資”になるでしょう。

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